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痴呆について

 痴呆は、主に脳の働きが低下したことによる記憶障害のことで、ひどい物忘れや記憶の混乱などの症状で始まります。便宜上発症の時期によって、40〜60歳に現れた場合を初老期痴呆、65歳前後〜70歳に現れた場合を老年痴呆と分けています。

記憶とは?

 記憶は、(1)自分が見たり聞いたりした体験を心の中に留め記す機能(記銘[きめい])、(2)後々まで保つ機能(把持[はじ])、そして(3)取り出し思い出す機能(追想)に分けられます。
 記憶の機能は若いほど良いのですが、20歳前後から次第に落ちてくるといわれ、なかでも記銘力が低下してきます。お年寄りが、昔のことは良く覚えているのに、最近のことを忘れるのはこのためです。

痴呆の具体的症状は?

 痴呆は、それまで年齢相応であった記憶が著しく低下して、頼まれた用事を忘れるなどの物忘れがひどくなることから始まります。しかし、初期の頃は忘れていることを指摘すると思い出すので、家族は気付かずにいることが多いようです。次第に、自分のいる場所がわからず外出時に迷子になったり、日時がわからなくなったり、家族の名前さえ思い出せなかったり、食事のあとに直ぐまた食事を要求したりするなど、見当識(注)の障害を中心とする精神症状が見られるようになります。
(注)見当識 時間と場所、およびこれに関連して周囲を正しく認識する機能。指南力とも言う。(広辞苑第四版(岩波書店))

初老期痴呆とは?

 初老期痴呆は、脳細胞に変化が起き萎縮したために脳の働きが低下して起こります。いくつかのタイプがありますが、代表的なものとして、人格が比較的保たれる『アルツハイマー病』と人格的な変化が目立つ『ピック病』です。

老年痴呆とは?

 老年痴呆は、一般に脳の細胞が変化した『アルツハイマー型老年痴呆(アルツハイマー病)』と、脳動脈硬化症や脳梗塞などの脳血管疾患、つまり血管が詰ったり、破れたりしたことによる『脳血管性痴呆』に分けられています。

治療法は?

 現在のところ、残念ながら確実な治療法はありません。脳血管性痴呆については脳の血液循環を良くする薬や血管の詰りを改善する薬などを使いますが、特にアルツハイマー病やアルツハイマー型老年痴呆に関しては進行を止めることは難しいとされています。

生活習慣での注意は?

 アルツハイマー病やアルツハイマー型老年痴呆の予防は難しいですが、脳血管性痴呆の方は食生活の改善が有効です。
 脳血管疾患は、3大生活習慣病の一つで、依然として日本人の死亡原因の上位にあります。かつては脳出血が、現在では脳梗塞がその代表的疾患です。日本人の食生活が主要因であり、食生活が改善され食塩摂取量が減るとともに高血圧症が減って、脳出血も以前よりは少なくなりましたが、血圧だけではコントロールしにくい脳梗塞が上位になったものと考えられます。

 そこで、高血圧症のほか、動脈硬化につながる高脂血症や糖尿病、そして肥満がキーワードになります。高血圧や動脈硬化を防ぐことは脳血管疾患を防ぐことになります。食塩やアルコール、動物性脂肪の摂取量に注意して、適度な運動とストレス解消がポイントです。



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